生きている人がいなくても寂しくはない
閉山した鉱山に住む人はありません。
私が小学生の頃ですから、もう三十年くらい前のこと、近くの鉱山跡へ社会科見学に行きました。
集まった子どもたちに、かつての鉱山関係者でしょうか、ひとりの男性が鉱山の歴史を語ってくれたのです。
その方はひとりで、この誰もいない鉱山に出入りしているのでした。
話の内容は何も覚えていないのですが、誰でしたか、同級生だったような気もするし、先生だったようにも思いますが、「ひとりでこんな場所にいて寂しくありませんか」と訊ねました。
すると男性は答えました。
「寂しくないよ。夜は賑やかだから」
さて、『かつくら vol.9 2014冬』に作家アンケートを書かせていただきました。
それから恒例の「マイベストブック」で『決壊石奇譚』を挙げていただいております。
推してくださった読者の方、ありがとうございます!
この作品では、過去編の舞台はとある銀山なのですが、書いていて上記のエピソードを何度も思い出しました。