アネモネ手帖

小説家・三木笙子のブログ

好み : 『嵯峨野明月記』辻邦生(中央公論新社)

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木曜日って疲れませんか。

 
週の後半なのに、お休みまでまだあと一日あると思うせいか、他の日よりも乳酸が増えているような気がします。

「おれはこの世の風俗などには関心はない。おれの描きたいのは、おれの心を捉えて離さぬ内なる思いだ。男女の風態がどうであれ、町衆の商売が何であれ、それを絵にかく気はしないな」
『嵯峨野明月記』辻邦生中央公論新社

「そしておれの描きたいと思うもの、吐きだしたいと思うものは、(中略)単に眼に触れるものではなく、自分の心のなかに執念のように生きつづける金銀の光沢であり、形の定かならぬ白の色合いであり、ある特定の木立や岩の形だった。」
『嵯峨野明月記』辻邦生中央公論新社

 どちらも俵屋宗達の台詞です。
この心の中にあるものは、その人固有の好みのことだと思いますが、それは私の中にもあって、たとえば好きなタイプのキャラクターだとか、好きな関係性だとか、好きなエピソードだとか、好きなストーリー展開だとか、「こ・れ・が・好・き・な・ん・だ」と強烈に動かしがたく存在しています。
そして小説でも写真でも映画でも彫刻でも何でもいいのですが、そういう好みが表れているものを見ると、一気に疲れが吹き飛ぶのでびっくりします。
実際には疲労物質が消えたわけではないのでしょうが、それを忘れてしまう。
どうしてそんなことが起きるのか。
不思議ですが、もし自分の好きな、そういった物だけに囲まれて暮らすことができたら、疲れも知らず、ただ楽しく生きることができるのかしらと考えたりします。

でも、疲れに気づかなくて早死にしそうな気もする。

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