読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

アネモネ手帖

小説家・三木笙子のブログ

クリストファー・マクドゥーガル『BORN TO RUN(走るために生まれた)』(NHK出版)

f:id:anemone_feb:20150303212024j:plain

スポーツが大の苦手な私でさえも、何度も泣いてしまって、いやコレうっかり電車の中で読めない本でした。

この本は三つの物語をひとつに融合させたものだ。
ひとつは、足を痛めた冴えないランナーである著者がメキシコの銅峡谷でカバーヨ・ブランコと呼ばれる幽霊を見つけ出し、史上最強の“走る民族”、タラウマラ族の秘術を探る話。
もうひとつは、多くのランニングシューズが人間の足に悪影響を及ぼしていることや、人間の体がもともと走るようにできていることを、バイオメカニクスや人類学などの科学的な説明をまじえて解き明かす話。
そして三つめは、タラウマラ族と世界最速のウルトラランナー、スコット・ジュレクをはじめとする七人のアメリカ人がメキシコの荒野で激突するレースの話だ。

どのテーマも面白くて、信号・踏切・レジを待つ時間や、寝る前のちょっとした時間も使って読み進めました。
信号待ちの時間なんて3行くらいしか読めないときもあるのですが、そうまでして読みたいと思える本を見つけたときが、人生におけるトップクラスの喜びのひとつです。

 

ところで私は人間の進化の歴史について書かれた本が好きで、真面目そうなのから「大丈夫かいな」と思うものまでいろいろと読むのですが、この本では、なぜ人間が二本足で走るようになったのか、について書かれています。
二本足で移動するようになれば、スピードは格段に落ちてしまうのに、どうして人間はその方向に向かって進化したのか。
そして、あらゆる能力において勝っていたネアンデルタール人が、どうして我々人間の直接の先祖になれなかったのかについても考察されています。

 

この本を読んではじめて「ウルトラマラソン」とは何かを知りました。
読んでいるだけで気が遠くなる過酷なマラソンです。
私は限界まで走り抜くということはできませんが、

「長い距離を走ってると」と彼女はつづけた。
「人生で大切なのは、最後まで走りきることだけって気がしてくる。そのときだけは、わたしの頭もずっとこんがらがったりとかしていない。なにもかも静まりかえって、あるのは純粋な流れだけになる」

ああいいな、そんな場所に辿りついてみたいなと思います。

 

広告を非表示にする