アネモネ手帖

小説家・三木笙子のブログ

「あなたは世界でひとつ。」「いいえ、私は流れ者。」―『びじゅチューン!』「転校しないで五絃琵琶」

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先日「びじゅチューン!」の「転校しないで五絃琵琶」を見て大泣きしました。
同級生の「螺鈿紫檀五絃琵琶」が転校してしまうというシンプルな筋です。

 
「何で五絃琵琶が同級生なの?」とお思いの方は、動画の右脇に出る「作品について」をご覧ください。

「転校しないで、五絃琵琶。あなたは世界でひとつ。」
「いいえ、私は流れ者。またどこかで会いましょう。」

 正倉院宝物の「螺鈿紫檀五絃琵琶」は現存する世界唯一の古代の五絃琵琶なので、まさに「世界でひとつ」です。
美しい螺鈿の装飾は人を惹きつけずにおきません。

雅楽が日本に渡来したのは聖徳太子の頃と伝えられている。その頃に異国から運ばれて来た楽器の中、平安京に都が移った時、楽人達の手によって京へ持ちこまれたものもあろうし、そのいくつかは大内裏が完成して後、楽所の蔵へ納められたに違いない。
また、その後にもどれほどの楽器が海を越えて日本へ渡り、ここにしまわれたことか。


『平安妖異伝』「孔雀に乗った女」平岩弓枝(新潮社)

またこの五絃琵琶は、遠い昔、長い時間をかけて東の果てまでやってきました。
流浪することは生活そのものだったはずで、自分を「流れ者」というのは仕方がないし、別れが日常だっただけに、「いつかは離れていく」「ここには長く留まれない」と思っているのでしょう。


国宝級でなくとも、誰かにとって大切な人は「世界にひとつ」で、去っていくほうは「またどこかで会いましょう」と言うほかない。
別れたくはないが、互いの気持も事情もよく分かる。
だから静かに離れていく――というこの歌がたまらなく好きです。

 

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平安妖異伝 (新潮文庫)

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