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アネモネ手帖

小説家・三木笙子のブログ

昭和初期のレトロなアパートメントと手動式エレベーター : 銀座「奥野ビル」

心惹かれるもの

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先日、銀座で手動式のエレベーターに乗ってきました。
「手動式」!
しかも現役!

 
上部についている階数表示は時計のように針が動きます。

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外側の扉と中の黄色い扉を自力で「よっこらしょ」と開けます。
結構重いし、正直面倒くさいのですが、不思議と心が浮き立ちます。
ある程度の不便さは愛着を生むものなのか。


この建物は銀座一丁目にある「奥野ビル」で、現在はギャラリーやアンティークショップ等が入っています。

又名物が一つ 銀座長屋 アパートの進出


銀座の真中に都市生活者の蜂巣住宅が生れることになった
場所は京橋に近い南寄の河岸でその名も銀座アパートメント


朝日新聞』1931年3月18日

 私の趣味は明治時代の新聞を読むことですが、今回はぐっと現代に近づいて、昭和6年の新聞記事からの引用です。
「長屋」と書かれていますが、私の印象はパリのアパルトマンです。
昭和初期につくられているだけに、全体が小さい。
私が六尺もある大女なだけに、とあるギャラリーに入ろうとしたら、何と頭がぶつかるのではなく額がぶつかる!
大げさに言えば、気分はガリバー旅行記ですよ。
しかしこの小ささが本当に愛らしく、郷愁を誘うのです。

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扉は部屋によって違っていましたが、どれも素敵でした。
それから階段のたたずまいが何とも言えないのです。

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ちょっと熱に浮かされたようになって、建物の中をさまよい歩いてしまいました。
魔法をかけられて時間を逆行したような気持、好きなものの中にひたすら埋もれていくような感覚、こういった「感じ」を小説で再現することが私の夢です。


ちなみにこの銀座一丁目は、私の帝都探偵絵図シリーズの主役である高広の下宿や礼の住む土蔵がある場所です。
昭和初期ともなれば二人は五十歳近くになっているはずで、どんな気持でこの「最新」集合住宅を見たかしらと想像するのも楽しいです。

 

人魚は空に還る (創元推理文庫)

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