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アネモネ手帖

小説家・三木笙子のブログ

明治時代のイクメン : 平岩弓枝『千春の婚礼』(文藝春秋)・湯沢雍彦『明治の結婚 明治の離婚』(角川書店)

資料

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恋女房である花世の妊娠が分かったとき源太郎は、

「茶碗より重いものは持たせませんし、掃除、洗濯も全部、わたしがやるようにします」

 

平岩弓枝『千春の婚礼』(文藝春秋)

と宣言します。
何しろ奥さんが大大大好きで、

 

「喧嘩でもしたんじゃないか」
「してないよ。第一、喧嘩してあやまるのはいつだってわたしのほうだし……」
「花世さんに出て行かれて、胸におぼえはないのか」
「ない……」
「源太郎君にはなくても、花世さんにはあるのかも知れないぞ」
「ないよ。絶対にない」
「例えば、花世さんが大事にとっておいた饅頭を君が食っちまったとか」
「逆だよ。わたしが後で食べようと思っていたのを、花世さんが食った」
「怒ったのか」
「怒るわけがない。そんな事は日常茶飯事だ」
「花世さんのへそくりをみつけて、黙って遣ってしまったとか……」
「そんなことをしたら、ぶっ殺されるよ」

 

平岩弓枝『千春の婚礼』(文藝春秋)

てな感じ。

「なにしろ、弁護士の資格を取る勉強をしながら私立探偵の内職も続けている。加えて、女房の花世は間もなく出産という大きなお腹を抱えているので、掃除、洗濯は勿論、炊事の手伝い、食材の買い出しまで引き受けているから、」

 

平岩弓枝『千春の婚礼』(文藝春秋)

「今夜も花世が眠ってしまってから米をとぎ、明日の朝のための味噌汁の下ごしらえをして、」

 

平岩弓枝『千春の婚礼』(文藝春秋)

メインキャラクターには惚れ惚れするようないい男ばかりが揃っている「御宿かわせみ」シリーズですが、源太郎も有言実行の男です。
いやあ女の夢だわあ。


が、小説ではなく現実にもこういう男性がいたから驚きます。
以下は読売新聞に掲載されたインタビューの要約。

明治二十三年、東京京橋生まれの三木お美喜は、十四歳のとき郵便為替管理所に就職。

 

湯沢雍彦『明治の結婚 明治の離婚』(角川書店)

そろばんの全国大会で優勝するほどの腕前になり、明治四十三年に結婚します。

相手は長男だったが、同じ職場の人だったので、当時としては珍しい恋愛結婚。上野にあった嫁ぎ先の姑は「共働き」を認めてくれたので仕事を続け、出産後も三週間後には出勤していた。夫もよく育児に協力してくれたという。

 

湯沢雍彦『明治の結婚 明治の離婚』(角川書店)

全国大会は十連覇、子どもは三人、旦那さんが局長になるとそこへ再就職して在職四十一年を記録しました。


それからこちらは有楽町駅に近い看板屋さんのご夫婦。子どもさんからの聞き取りです。

父が年上で、十五歳も年が違う二人でしたが、喧嘩したのを見たことがありません。

 

湯沢雍彦『明治の結婚 明治の離婚』(角川書店)

結婚したのは明治四十三年頃とのこと。

父は母を物凄く大切にしていましたから、母はとても幸せだったと思います。例えば朝は、父が子供たちみんなに御飯を食べさせ、女の子全員の髪を父が結ってくれました。
母は父が帰宅するのを玄関で待っていて、パチンと二人で手を合わせては出かけました。まるで運動会のリレー競争のようだと思いましたよ。一人で歌舞伎を見に行ってたのです。夕飯の世話は父と姉がしました。

 

湯沢雍彦『明治の結婚 明治の離婚』(角川書店)

え、明治? 明治時代なの? 明治にそんな男いたの?

当時の男女関係に関わる資料を読んでいると、ものすごーくいやーな気持になることが多いのですが、現実にこういうご夫婦もいて、数は本当に少なかったでしょうが、ほっとした気持になります。

 

余談ですが「御宿かわせみ」シリーズで、私が一番好きなキャラクターは源太郎の奥さんの花世です。
基本的に女性キャラには関心がないのですが、彼女ときたら気が強くて頭が良くて行動的で愛想がなくて大好きなんですよ。

 

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anemone-feb.hatenablog.com

 

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千春の婚礼 新・御宿かわせみ

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明治の結婚 明治の離婚―家庭内ジェンダーの原点 (角川選書)

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