アネモネ手帖

小説家・三木笙子のブログ

9月21日発売 『怪盗の伴走者』三木笙子(東京創元社)※9/21追記あり

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上 : 安西省吾(東京地方裁判所検事局検事)
下 : 怪盗ロータス(アルセーヌ・ルパンに憧れている)

「日本に戻ってきた蓮(ロータス)は私に会いに来ました。私は検事の試補期間を終えようとするところでした。その私に、怪盗になるなどと、馬鹿なことを――」
 安西は言葉を切った。
 その顔には重い疲労が浮かんでいる。
 高広はためらいながらも言った。
「安西さんは、今回のロータスの狙いが何なのか、お分かりなのでしょうね」

今作は、里見高広・有村礼が主役の「帝都探偵絵図」シリーズ第4巻ですが、一巻を通して怪盗ロータスと安西検事に焦点を当てたスピンオフ作品となります。
怪盗ロータスの真の狙いは何か。
明治末期・帝都――。
浅草の凌雲閣を舞台にして、因縁の二人が激突します。

(2015年に発売された『怪盗の伴走者』の文庫版です)

 

第一話 伴走者

ロータスと安西の出会い。十代半ばのロータスが、人助けのため地中に埋められた金を取り出してやるついでに、米相場を引っくり返します。

「ありがとう、省吾」
 蓮がしゃがみこんで笑顔を見せた。
「おかげで助かったよ。君に会えて、僕は本当に運が良かった」
「蓮……」
「君なら僕と同じ速さで走ることができる」
 その言葉の意味を、省吾はまだ正確には理解していなかった。

 

第二話 反魂蝶

「山神様の蝶」と呼ばれる希少な蝶をめぐる事件。朱に交わった安西も犯人を罠にかける芝居に参加しますが、ロータスを知れば知るほど彼が恐ろしくなっていきます。

 だがいずれ、省吾は蓮についていけなくなるだろう。
 気持の上でか、能力においてか、それともその両方なのかもしれなかったが、省吾は蓮と共に走ることができなくなる。
 それは、はっきりとした予感だった。
 そのときの自分を、蓮はどんな目で見るのだろうか――。


第三話 怪盗の伴走者

浅草にそびえ立つ凌雲閣で、高広と礼が見守る中、検事となった安西、そして怪盗となったロータス、立場を違えた二人が対峙します。

「私も司法側に立つ人間として、ロータスの挑戦を受けて立つつもりです。向こうがどんな罠を仕掛けてくるか分かりませんが、こちらも手は打ってあります」
(中略)
 器が違うと言いながらも、安西は負け戦をするつもりはないらしかった。
ロータスも、力のない人間が相手では面白くないでしょうから」

 

今回も下村富美さんに素晴らしい表紙と扉絵を描いていただきました。
見ているだけでドキドキするようなイラストなので、是非ご覧になってください。

怪盗の伴走者 (創元推理文庫)

怪盗の伴走者 (創元推理文庫)

 

www.tsogen.co.jp

「帝都探偵絵図」シリーズの既刊はこちらになります。
既刊には試し読みのページもありますので雰囲気を味わってみてください。


なお、怪盗ロータスと安西検事が登場する作品は下記の通りです。
第1巻『人魚は空に還る』収録「怪盗ロータス
第3巻『人形遣いの影盗み』収録「人形遣いの影盗み」


いろいろな場所で何度も書かせていただいておりますが、デビューした時から、仕事や勉強の後にほっとした気持で読むことができる小説を目指してきました。
読者に「優しくて暖かな雰囲気」「心地よい哀しみと快い切なさ」「読後感の良さ」を提供したいと思っています。
これからも、そういった作品をお届けすることをお約束します。

 

★9/21追記

東京創元社さんの「Webミステリーズ!」で取り上げていただいております。

www.webmysteries.jp

「くらり」可愛いよ、くらり。
愛想がなさそうな顔つきなのにちゃんと宣伝してくれるところが可愛い。

www.tsogen.co.jpまた、同じく東京創元社さんのホームページで試し読みができます。

www.tsogen.co.jpしかも、下村富美さんの扉絵まで載っている!
(1話のみ)
子どもの頃の怪盗ロータスと安西検事が見たい方は是非。
まあでも、文庫をゲットするとマジシャン風のロータスとか、現在の彼らも見ることができますよ~。

 

★9/19追記

今日は栞のご紹介です。
絵柄は『人形遣いの影盗み』(単行本)の表紙で、裏面に私のメッセージが載っています。
後で読み直して「栞の存在意義を否定しちゃったよ……」と気づきましたが、すでに手遅れ。
ま、下村さんのイラストが素敵なので、そちらをメインに楽しんでください。
今回、栞は一部のアニメイトさんで特典として配布されます。

怪盗の伴走者の特典や店舗特典-アニメイト

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★9/15追記

既刊の帯3種類をご紹介しましたが、今日はポップです。
飾ってくださっている書店さんを見かけたら是非教えてください!
今、私の手元に現物があるのですが、下村さんのイラストが本当に素敵で惚れ惚れします。
人間の手は、黒一色だけでこれほど描くことができるものなんですね。
なお、安西のイラストは新刊の扉絵です。
背後にはロータスがいるので、全体をご覧になって、漂う緊張感を味わってください。

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★9/14追記

最後は「怪盗ロータス」の帯になります。
毎回、下村富美さんに素晴らしい挿絵を描いていただいているのですが、ロータスの顔は単行本の表紙・文庫本の表紙・文庫本の扉絵でそれぞれ違っています。
下村さんからご覧になって、不気味なときもあるし、残酷なほど子どもっぽいときもあるからだそうです。
書いている私は「へーそうなのかー」と思ったのですが(笑)。
とはいえ怪盗なので、受ける印象が様々というのはいいことなのかもしれません。

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★9/10追記

次は「里見高広」の帯です。
「帝都探偵絵図」シリーズにおいて高広・礼は「二人で主役」なのですが、それでも何かと礼が優先されるあたり(表紙の大きさ等)、キャラクターが反映されていて面白いと思います。
この帯は2巻用ですが、コピーに使われている文章は3巻『人形遣いの影盗み』の中のものです。

好きであればあるほど、己が身は愛するものから引き離されていく。


人形遣いの影盗み』「永遠の休暇」p150

私が好んで書くテーマです。
お陰様で物凄く書きやすかったのですが、華族については調べれば調べるほど泥沼に……。

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★9/9追記

今回は既刊にも新しく帯を作っていただきました。
(他にもニュースがあるので順次お知らせしていきます)
まず最初は「有村礼」の帯から。
帯は編集さんが作ってくださるのですが、この「僕がワトソンで~」という台詞を選んでくださったのを見たとき、作品にぴったりで凄いなと思いました。
自分では書いたことを忘れていたので(笑)。

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