アネモネ手帖

小説家・三木笙子のブログ

よそ見寄り道良い人生

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前述の通り、オコジョさん(夫)と一緒にいるときは前を向いて歩かないワタシですが、先日、図書館からの帰り道にふと思いました。
確かにワタシは横ばかり向いている。
だがちゃんと足は動かしているのだ。

 

「(前略)しかるに奇とすべきは、彼が康衢通逵(こうくつうき)をばかり歩いてはおらずに――」
「閣下、あんまし難しい言葉をお使いにならねえでおくんなさい。何分、無学なもんで」
 老人(森鴎外)は頭をめぐらせて、笑いもせずにひとつ肯いた。
「つまり、歩きやすい大通りばかりを歩いてはおらずに、往々径(こみち)に立ち寄ってさまざまの雑学を弄んだ。私はそういう抽斎がうらやましくてならない。国家の言うなりに、なさねばならぬ仕事ばかりに追いまくられた結果がこれだ。御両君とも、よい仕事をなし、よりよい人生を送りたくば、けっしてお上に与してはならんよ。大道はいっけん歩きやすいように見えるが、振り返っても足跡は残らず、先を望めば涯てがない」


『天切り松闇がたり 第三巻初湯千両』浅田次郎集英社

ワタシ「よそ見してればいろんなものが目に入るし、前には進んでるんだからいいんじゃないの」
オコジョ(夫)「前を向いて歩いてください」

 

納得してもらえませんでした。

天切り松 闇がたり3 初湯千両 (集英社文庫)

天切り松 闇がたり3 初湯千両 (集英社文庫)

 

 今週のお題「これって私だけ?」