【新連載情報1】20年2月10日発売『小説WINGS・冬号』(新書館)にて『招かれざる客~黒の大正花暦~』スタート
「それでは貴方が犯人というわけですか」
そう言って彼が目を細めた瞬間、花守は白い大輪の菊が咲き乱れる幻想を見たように思ったが、それどころではないと我に返った。
「僕ではありませんよ」
「ですが、誰が見ても貴方が犯人としか思えませんね」
言葉は冷たいが、声音にはどこか面白がっているような響きがあった。
『招かれざる客~黒の大正花暦』第一話「水仙」より
今回の作品の舞台は大正時代。
第一次世界大戦勃発後の好景気に沸く帝都で、『異客(いかく)』と呼ばれる不思議な寄生植物にまつわる様々な事件が起きます。
対峙するのは二人の青年で、
白菊芳史(しらぎく・よしふみ)イラスト・左
触れると植物が枯れてしまう「黒い手」の持ち主。農商務省の嘱託として異客が関わる事件を追っている。
花守啓介(はなもり・けいすけ) イラスト・右
ハーバード大学を卒業した歯科医。非常に器用なことから白菊に手を貸すことに。
この作品のモチーフはリルケの『秋』という詩です。
木の葉が散るように、この世のすべてが孤独の中へ落下していったとしても、
だがこの落下を限りなくおだやかに
その手に受け止めてる一人のひとがある。
異形の力を持つが故に生きづらさを感じている白菊が、朗らかな花守と出会うことで、とまどいながらも少しずつ変化していく様子を書いていきます。
小説は全4話で、20年2月10日発売『小説WINGS・冬号』からスタートです。
また本作はコミカライズと同時進行です。
マンガ・イラストは伊東七つ生さん、シナリオ構成は別府マコトさんです。
別府マコト⚔️騎士団長島耕作連載中 (@macoto_b_) | Twitter
こちらは20年2月28日発売『WINGS』から連載スタート。
コミカライズの何が楽しいって、私が頭の中で好き勝手作ったストーリーとキャラクターを、私以外の人が目に見える形にしてくれることです。
「ああ貴方、こんな顔してたの」とか、「他の人にはこんなふうに見えるんだ!」とか、想像力を媒介にして形のないものが形をとる――これはいつでも新鮮な驚きです。
この作品を読んでくださった方の心の中にも、どうかその人だけの「形」が生まれますように。
なお、ブログ・twitterで使用しているイラストは伊東さんのご厚意でお借りすることができました。
ありがとうございました!
『小説WINGS』には伊東さんの挿絵もありますのでお楽しみに。