アネモネ手帖

小説家・三木笙子のブログ

朝日新聞の「東京物語散歩」で取り上げていただきました : 三木笙子『竜の雨降る探偵社』(PHP研究所)

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朝日新聞」東京版で水曜日に連載されている「東京物語散歩」に取り上げていただきました(2016年1月13日)。
東京物語散歩」は都内を舞台にした国内の文学作品を紹介するコラムです。

 

『竜の雨降る探偵社』は昭和30年代の新宿が舞台で、浮世離れした元神主・櫂(かい)が探偵、それを見守る幼馴染の経営者・慎吾が助手という布陣です。
この探偵社はどういうわけか「雨天のみ営業」と噂されていて、依頼人の来ない晴れた日は、櫂が傘張りの内職をしています。
櫂の作る傘は凄いんですよ。
何しろ雨も風も勝手によけてくれる特別製です。ワタシも欲しい!


この本には全4話収録されており、第3話に「淀橋浄水場」が出てきます。
新宿の都庁付近に浄水場があったということを知っている人は少なくなりました。
淀橋浄水場を書くのはとても楽しかったです。
現在は高層ビルが建ち並ぶ大都会の一角に、雲と空だけを映した広大な浄水場があった――そんなふうに想像するのは胸がすっとしました。
それから、水のろ過方法が現在とは違っていて、書き飛ばそうにもストーリーと深く関わるのでごまかすわけにいかず、あれこれと調べても結局分からなくて、東京都の水道局に電話をしたところ、とても丁寧に教えていただいたのもいい思い出です。


今回のコラムのタイトルに「現実と幻想が均衡保ち展開」とつけていただいているのですが、ああ本当にそうなの、そんなふうに書きたかったのと嬉しくなりました。
私は異世界を舞台とするファンタジーは苦手なのですが、ちょっと不思議な話は大好きで、「不思議」がなくてもストーリーは成立するけれど、あれば適度な飾りになるというギリギリのバランスに立っている小説を書きたいと思っているからです。


twitterのプロフィールにも載せていますが、「仕事や勉強の後にほっとした気持で読むことができる小説」を目指してきました。
読んでくださる方に「優しくて暖かな雰囲気」「心地よい哀しみと快い切なさ」「読後感の良さ」を提供したいと日々願っているので、拙著を常備薬のようにお手元に置いていただけると嬉しいです。


なお、トップ画像は『竜の雨降る探偵社』で使った資料群です。
再来月の3月に文庫版が発売されるので、今ちょうどひっくり返しているところです。

 

竜の雨降る探偵社

竜の雨降る探偵社

 

 

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