アネモネ手帖

小説家・三木笙子のブログ

【新刊情報1】19年2月22日発売 『赤レンガの御庭番(エージェント)』三木笙子(講談社タイガ)

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全面 : 入江明彦(米国帰りの探偵。常に機嫌が良く悩み知らず)
影 : ミツ(謎の青年。明彦と行動を共にすることに)

「地道に証拠を集めるより罠にかけたほうが早いので手伝っていただけませんか」
「ずいぶん荒っぽいな」
「お気に召しませんか」
「いや」
 ミツが赤い唇の端を吊り上げた。
「早く片が付くのは有り難い」


(第二話 皇太子の切手)

 

 

明治末の横濱。米国帰りの探偵と謎の美青年が「御庭番(エージェント)」として絶世の美女率いる闇の組織「灯台」と対峙する。


将軍直属の情報機関「御庭番」を務めた家で育った探偵、入江明彦。米国帰りの彼は容姿端麗、頭脳明晰――しかし、完璧すぎるあまり、心を許せる友はいない。横濱に事務所を構え、助手の少年・文弥に世話を焼かれながら暮らしている。訳ありの美青年・ミツと出会った明彦は、犯罪コンサルタント組織『灯台』と対峙することになり――? 異国情緒溢れる、明治浪漫ミステリー!


「講談社タイガ|講談社BOOK倶楽部」より)

 
第一話 「不老不死の霊薬」


飲めば永遠の若さが手に入る不老不死の霊薬が売られているという。米国から帰国し、横濱のホテルで探偵事務所の看板を掲げた入江明彦は、ある霧の夜に「絶世の美女」と出会う。

「私は貴方の名前が知りたいんです」
「知ってどうする」
「友人になりたいと思っています。横濱へ来たばかりで、あまり知り合いがいないものですから」
 男は一瞬、目を丸くしたが、すぐに顔をしかめた。
「変な奴だな」
 まったく同感だ、とうなずいた文弥を明彦が睨みつけた。

文弥は明彦の乳母の息子で、家事万能の少年です。
明彦の世話をするのが己の使命と心得ていて、

「ですが、先生は変わっています。先生のやり方では人並みの幸せも覚束ないかもしれませんから、僕がお力添えしたいと思っているんです。まずはお友達から作りましょう」

 

第二話 「皇太子の切手」


放火が頻発する横濱で、世界一高価な切手が盗まれた。そんな折り、明彦は横濱の大富豪から「御庭番」の誘いを受けると同時にミツの正体を知らされる。

 言いかけて明彦が口をつぐんだ。
 そんな明彦を見て、驚いたことにミツがふっと笑った。
「あんたでも気を遣うんだな」
「人を何だと思ってるんです」
「いや、まあ――そうだな」
 ミツはしばらくの間、笑いをこらえるような顔をしていたが、(後略)。


第三話 「港の青年」


横濱で大人気の芝居のモデルになった青年が失踪した。彼の妹とともに行方を捜す明彦は、叔父の本橋から「灯台」が手引きする大がかりな密輸の話を聞く。

「『灯台』はあんたのすぐそばまで来ている」
「喜んで受けて立ちますよ」
 ミツは眉を上げて何か言おうとしたが、ため息をつくと口を閉ざしてしまった。
「どうしたんですか、ミツさん。いつものように怒鳴ってくださらないと張り合いがありませんよ」
「心配してるんだ、これでも」

明彦の義理の叔父である本橋は、どういうわけか明彦を幼い頃から可愛がっていました。

「叔父は子どもの頃から私(明彦)に大変甘いのです。私の容姿については見た通りなので、そのままの評価で結構ですが、仕事ぶりについての叔父の誉め言葉は話半分に聞いておいたほうが良いかと」


(第二話「皇太子の切手」より)

第三話では、文弥の友人の少年・文吾も登場。

 港の悪ガキたちをひと睨みで黙らせる文吾が、文弥の作ったマドレーヌやシュークリームを嬉しそうに食べている様は可笑しくも微笑ましい。


第四話 「My Heart Will Go On」


灯台」の罠により文弥が大怪我を負い、ミツが御庭番から外され、追いつめられた明彦だったが、ミツの何気ない一言から「灯台」の首領の正体に気づく。

「探偵の助手など、文弥が望んでやっているのではありません。乳母の息子として断ることのできない立場のあの子を、私が勝手に巻きこんだのです」
「だが、それがあの子の望みだ」
 ミツが茶碗と受け皿を置いた。
「あの子はあんたが好きだからな。どこがいいのか分からないが」
「え、そうですか」
 思わず聞き返した明彦に、ミツが呆れた表情を浮かべた。
「相変わらず自信家だな」


何と表紙は今回も須田彩加さんに描いていただきました。

須田彩加 (@ayaka_s) | Twitter

 

そして装丁は、またもまたも大岡喜直さんです。(何回目?)

next door design


「またお前か」と言わずに、お二人とも引き受けてくださってありがとうございます!

 

赤レンガの御庭番 (講談社タイガ)

赤レンガの御庭番 (講談社タイガ)